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この音、デザイン、HDMI搭載で10万円以下。仏TRIANGLEのアクティブスピーカー「Borea BR02 Connect」を味わう
- 提供:
- 完実電気
2025年5月26日 08:00
デスクトップオーディオ始めたい人、増えてます
最近、前職のチームラボ時代の旧友たちから、「自宅のデスクに置けるおすすめのスピーカーを教えてほしい」という相談が続けて寄せられた。要するに、デスクトップ環境で音楽を楽しみたいらしい。
コロナ禍を経て、テレワークが一般化し、自宅のデスク周辺を趣味空間として整えたい人が増えている。その中心にあるのが、パソコンやスマートフォンと組み合わせて音楽を楽しむ“デスクトップオーディオ”というスタイルだ。気軽に省スペースで、でも音楽を良い音で楽しみたいという需要が、確実に広がってきている。
やはり、ノートPCの内蔵スピーカーでは音楽・映画鑑賞には物足りない。かといって、巨大なコンポやスピーカーを置くスペースは無い。このような状況で選択肢となるのが、アンプを内蔵したアクティブスピーカー。電源を入れて、パソコンと有線/無線で繋げばすぐ音が出る。それで、いわゆる“PCスピーカー”を越えるクオリティが楽しめる。
僕は、質問してきた旧友に、「ちょっと値段は張るけど、オーディオメーカーのモデルを買った方がいいよ」とアドバイスしたのだが、その時に、価格、機能、音質、サイズなどのバランスで、まさに、デスクトップオーディオ入門に最適なスピーカーとして頭に浮かんだのが、TRIANGLE社の「Borea BR02 Connect」(ペア96,800円)だ。
TRIANGLEとは
同社は1980年、インテリア・デザイナーかつオーディオファイルのルノー・ド・ヴェルニェット氏の手によりパリで創業されたスピーカー専業ブランド。つまりフランスのスピーカーだ。
フランスといえば、ルイ・ヴィトンやエルメスといったファッションブランドを思い浮かべる人が多い。車なら、プジョーやシトロエンのように、主流に流されない独自性を持つメーカーが目立つけど、これらに共通するのは“洗練されたデザイン”だろう。僕が使っているフランス製のスピーカーAudioNec「EVO3」も同じように、他にない独特なデザインコンセプトと唯一無二の音を持っている
設立当初のトライアングル社は、技術的に先鋭的なオーディオメーカーだった。創業年には、2筐体モジュール構造を採用したスピーカー「1180」を発表し、2000年代には同社の音響技術を結集したリファレンスモデル「Concerto」を市場に投入。いずれも技術革新の象徴として高く評価された。ただし、経営面で大きな成功を収めたとは言い難く、日本でも一時はそのスピーカーが流通していたものの、やがて輸入が途絶える時期があった。
そんな中、ウーゴ・デツェレ氏が新たな経営者として就任する。彼は、トライアングルの持ち味である透明感のある音色とエッジの効いたシャープな音を継承しつつ、ストリーミング時代のリスニングスタイルに対応すべく、スマホやパソコンとの親和性を重視した、アクティブスピーカーの開発を他社に先駆けてスタート。また、インテリアに調和するデザインも追求した。その結果、トライアングル社は世界的に再評価され、今年あらためて日本市場への再上陸を果たした。
執筆時点で日本で購入できるトライアングル社のスピーカーは、アンプを内蔵したアクティブ・ブックシェルフ型と、従来のパッシブ型の2タイプがある。アクティブ型は、今回レビューする「Borea BR02 Connect」と、一回り大きい「Borea BR03 Connect」(ペア115,500円)、さらにコンパクトな「LN01A」(ペア74,800円)の3機種。一方のパッシブ型は、ブックシェルフ型の「Borea BR02」から、フロア型の本格モデル「Borea BR10」まで、4モデルが揃う。
なお余談だが、フランス本国では、17,000ドルもの価格のハイエンドスピーカー「Magellan - Quatuor 40th」や、ホームシネマ向けのサラウンド用スピーカーなども幅広く展開している。
セットアップは簡単、HDMI ARC/eARCにも対応
2025年5月、Borea BR02 Connectが自宅1Fの試聴室に運び込まれた。Oak Blue、Oak、Black、Light Oakと4色のカラーから選んで良かったのだが、僕は部屋のインテリアとのバランスと、美しいブルーのバッフルが特徴のOak Blueを選択した。
開封すると、箱の最上部にスタートアップガイドが入っていた。ガイドは英語表記だが、イラストがわかりやすく、視覚的に接続方法を把握できる。初めてアクティブスピーカーを導入する人にとって、このような気遣いは本当に嬉しい。
付属品は電源ケーブル、左右のスピーカーを接続する専用ケーブル、そしてリモコン。Borea BR02 Connectは右チャンネル側にアンプや入力端子を備えた“マスター”を配置し、左チャンネルは“スレーブ”として動作する構成を採っている。ということで、接続は、マスター側に電源ケーブルを挿し、スレーブ側とスピーカーケーブルでつなぐだけというシンプルさ。なお、左右スピーカー間を無線で接続するタイプのスピーカーも出ているが、そのような製品の価格はより高くなる傾向がある。
キャビネットのデザインは北欧的なミニマルスタイルを基調とし、淡いブルーのフロントバッフルが特徴的。白を基調とした僕の部屋のインテリアにも自然に溶け込んでくれた。筐体サイズは幅176mm、高さ310mm、奥行き274mmと比較的コンパクトで、デスクトップにおいても視覚的な圧迫感が少なく、場所を取りずらいのは良いところ。ファブリック素材のサランネットも質感が高く、従来のアクティブスピーカーに見られがちな“ガジェット感”を排除した、洗練された外観に仕上がっている。家族が帰ってきたら部屋に招き入れて自慢しよう。
スピーカーユニットは2ウェイ構成のバスレフ型で、高域には25mmシルクドーム・ツイーターを搭載。独自のEFS(Efficient Flow System)と呼ばれる音の拡散をコントロールするフェーズプラグと組み合わせて、高域の分散性と自然な広がりを確保している。
中低域には、100%天然セルロース紙を用いた133mm径ウーファーを採用。再設計されたプロファイルによって、豊かで自然な中低域を再生するそうだ。純白の振動板は、音質だけでなく外観の洗練にも寄与している。
アンプ部にはClass-D方式を採用しており、高効率と出力の両立を実現している。出力は各チャンネル50Wで、一般的なリスニング環境では十分な駆動力を発揮するはずだ。
背面の端子構成も充実している。デジタル入力としてUSB-B、光デジタル(TOSLINK)、同軸デジタル(S/PDIF)を装備。アナログ入力は3.5mmステレオミニ、RCA、さらにPhono(MM)入力も用意されており、レコードプレーヤーもダイレクトに接続できる。
さらに、HDMI端子はARCおよびeARCに対応しており、テレビとの接続も可能。サブウーファー出力も備えており、2.1ch構成への拡張も視野に入れられる。Bluetooth機能はaptXおよびaptX HDに対応、至れり尽くせりの内容である。
小型スピーカーとは思えないサウンド
設置はもちろんデスクトップに。試聴はMacBook ProとBorea BR02 ConnectをUSBケーブルで接続し、2024年11月に日本で正式にサービスを開始したQobuzから楽曲を再生した。
まず試聴したのは、レディー・ガガの最新アルバム「アブラカダブラ」。音が出た瞬間、小型スピーカーとは思えないローエンドの沈み込みと、俊敏な音の立ち上がりに驚かされた。高域は非常にクリアで、音楽が心地よく響く。安価なPCスピーカーとは次元の違う世界で、「これだ、これが“デスクトップオーディオ”のスピーカーに必要な音だ」と思わせる説得力がある。
コンパクトなスピーカーだが、低域の量感は十分に出る。しっかりと出るタイプなので、個人的には、リモコンで低音域の量感を少し下げるとさらに良い感じになった。
続けて再生したのは、ハンス・ジマー「The World of Hans Zimmer - Part II」収録の「ザ・ロックのテーマ」。冒頭のストリングスが静かに立ち上がると、その繊維質な響きと自然な残響の描写力に息を呑む。ここでも心地よく美しい音色が印象的で、バイオリンの音色は華美になりすぎず、リアルな音として空間に存在する。
ここで強く感じたのは、BR02 Connectは単に情報量が多いのではなく、情報の“質”が高いという点だ。楽器ごとの音色の違いや、弦の弾力、奏者のブレスまでが明瞭に表現される。サウンドステージが机上に立体的に広がり、リスナーは「音楽を聴いている」のではなく、「音楽の中にいる」感覚に包まれる。クライマックスで金管や打楽器が炸裂する場面でも、アンプの制動力がしっかり効いており、エネルギーが暴れることはない。
ワイヤレスで聴くとどうだろうか。
iPhone 17とBluetoothでペアリングし、星街すいせいの「もうどうなってもいいや」を再生した。先ほどの有線接続のような絶対的な情報量こそないものの、音全体に透明感があり、ベースラインはしっかりと沈み込みながらも過剰に膨らまず、正確に音階を奏でる。ボーカルの芯がしっかりと立っており、曲が内包する訴えかけるような感情を的確に描き出す。印象的だったのは、小音量でも音の輪郭が失われず、さらにクラスDアンプにありがちな“デジタル臭”や無機質さがほとんど感じられなかった点だ。
前述の通り、付属のリモコンを使って音量や高音域・低音域の調整が可能だ。欲を言えば、もう少し細かく段階調整ができるとより嬉しいところ。
スピーカーを使いこなす。そしてオーディオの沼に沈んでいく
ペアで10万円を切る小型スピーカーなので、気軽に使える製品なのだが、音が良いので、聴いていると「あそこに手を加えたら、さらにクオリティが上がるのでは」とムズムズしてくる。これがオーディオファンの性というものか。
まずは、机に直置きしていた状態から、インシュレーター「EXCEL SOUND ESI-100」を導入。これはソルボセインという高分子振動吸収素材を使った軟質系のインシュレーターで、価格も手頃で扱いやすい。
設置した瞬間に低音の付帯音が減り、大音量時に机へ伝わる振動も軽減された。安価な防振ゴムでも十分効果があるため、これはぜひ試してほしい対策だ。また、より音の輪郭を強調したい場合は硬質系のインシュレーターで低域の質感をチューニングすることもできる。
音が良くなると、もう止まらない。
次に試したのは電源ケーブルの交換。アクティブスピーカーである本機は、アンプが内蔵されているため、電源ケーブルによる音質変化を確認したのだ。今回は音色の曲が少ないOFC導体のケーブルとFURUTECH製プラグを組み合わせた自作のケーブルを使用。ケーブルがホワイトカラーなので、インテリアとの調和も意識した。この交換によって、低域に厚みと迫力が増し、レスポンスのスピード感も向上した。
一昨年頃からオーディオマニアの間で話題となっていた“仮想アース”も試してみた。使用したのはKOJOの「Crystal EpR-G」で、S/PDIF入力のRCA端子に接続。
正直、効果には半信半疑だったが、これが想像以上だった。ベールが一枚剥がれ、背景のノイズも減少、音のリニアリティが向上する。音場の奥行きも深まり、各楽器の質感描写がより繊細になる。あまりにも効くので、発売元の技術者に確認したのだが、市場で販売されている、多くのアクティブスピーカーはDクラスのアンプかつスイッチング電源を採用しており、このようなスピーカーへの仮想アースは、かなり効果が高いと返答をもらった。
このように、アクティブスピーカーでもアクセサリーによる音質調整が十分可能であること、それにしっかりと反応する再生能力を持っている点は特筆すべきだ。一般的にアクティブスピーカーはアンプとの組み合わせによる楽しみが制限されるとされるが、実際には工夫次第で音質向上の楽しみが得られる。
これ以上やると、アクセサリの方がスピーカーより高価になってしまいそうだが、これもBorea BR02 Connectが、Hi-Fiスピーカーとして高いクオリティを持っており、セッティングやアクセサリによる音の変化を描写できるからこそ。また、こうした変化を楽しむのもオーディオ趣味の醍醐味。“沼への入口”になるスピーカーだ。
なお、スピーカーの特徴や、その他の音楽を再生した時の感想は、完実電気のYouTubeチャンネルの動画で筆者が行なっている。トライアングルのHUGO CEOのコメントもあるので、こちらも見ていただければありがたい。
映画を楽しむスピーカーにもなるBorea BR02 Connect。8万円を切る「LN01A」にも注目
最後に、寝室へ本機を持ち込み、ARC対応HDMI端子を活かしてテレビと接続してみた。HDMIケーブルにはKordz社の「PRO」を使用し、Apple TVから「エイリアン:ロムルス」を再生。当たり前だが、テレビの純正スピーカーとの音質差は歴然で、セリフの明瞭度や爆発音の迫力がまったく異なる。「まるでホームシアターのような没入感が得られた」と書くと、言い過ぎかもしれないが、この音なら、リビングでの常設用スピーカーとしても十分通用する。
総合的に見て、Borea BR02 Connectはピュアオーディオの設計思想をしっかりと受け継ぎながらも、現代的なライフスタイルに適応する柔軟性を備えた、デスクトップ用途との相性が良いアクティブスピーカーである。パッシブスピーカー + アンプ構成を検討していたようなオーディオユーザーにも、自信を持って薦められる1台だ。
もしここまで読んで興味を持ったが、予算的に迷っているという人には、同社のエントリーモデル「LN01A」(ペア74,800円)もおすすめしたい。HDMIこそ非搭載だが、Bluetooth接続やPhono入力など、基本機能はしっかり備えており、デザイン性も同様に高い。ウォールナット、ホワイト、ブラック、ブルーなど、豊富なカラーバリエーションも魅力だ。
スピーカーは、もはや音が良いだけでは選ばれない時代に入っている。2000年代以降は、室内と家具に、温かみのある木材やファブリックがミックスされ、インテリアとオーディオの調和が強く求められるようになった。そうした背景のなかで、「良い音」「美しい佇まい」「現代的な機能性」を三位一体で満たすBorea BR02 Connectは、まさに今の時代に合ったスピーカーだと言える。
Hi-Fiスピーカーの実力を持ちながら、使いやすさとライフスタイルへの適応性を備えており、購入後の満足度はすこぶる高い。僕は、試聴ということを忘れ、机の上で音楽をたくさん聴いた。